PrinceとMichael 音楽の神の寵愛を受けたふたり
時に音楽の神様はわがままな子供のようだ
目をかけ慈しむように豊潤に恩恵を与えたお気に入りは
やはり手元に置いておきたくなるらしい
どうにも待てなくなるらしい
そうしてあの日、わたしたちの大切な彼を連れて行ってしまわれた
そして今また
誰もが思いもよらないくらい急に
彼と同じ年にこの世に落とし給うたもうひとりの天才を
嵐のごとく連れ去ってしまわれた
Prince
世界はその日、彼への敬意を表すために紫に染まった

あの日を嫌でも思い出す
彼を殿下と呼び慕い、彼の音楽を心から愛するファンたちの衝撃を
わたしたちは痛いほどよくわかる
どんなに悲しくて悔しくて心もとなくてさみしいか
ファンにとっては、愛するその人から贈られる音楽はいつも何かを与えてくれていた
生きていることの喜びだとか楽しみだとか
時にはうちひしがれている自分にひとときのやすらぎをくれたり
上手くいかないもろもろを忘れさせてくれたり
あるいは勇気だったりやる気だったり
日常を忙しくすごしている中で
街角で、ラジオから、テレビ番組のBGM
ふとした時に聞こえる大好きなイントロだったりメロディだったり
それだけでもいいことがあったと思える
アーティストから何かしらのギフトをいつももらって生きてきた
ずっと続くと思っていたもの
ずっとそばにあると信じて疑わなかったもの
それが突然になくなる
その人の創りあげる音もメロディもビートも歌声も笑顔も何もかも一瞬にして失う
そしてもう二度と新しいギフトが贈られることはない
すでにもらったものを繰り返し繰り返し
大切に大切に慈しむしかなくなる
大好きな味の大きな飴玉
ゆっくりゆっくり味わわなければならない
もっと沢山味わいたいからといって、せっかちに噛んでしまってはいけない
もう次のご褒美はないのだから
そのことがどれほど悲しいか、辛いか、虚しいか
誰に、どこにぶつければいいかわからない怒りにも似たくやしさ
そのひとが満たしてくれていた心の泉が、急激に干上がっていくような恐怖にも似たさみしさ
Princeのファンの置かれた今の状況
せつなさ、やるせなさ
それは7年前のわたしたちにも突きつけられた現実で
いやと言う程味わった感情だったから
プリンスは一時期、彼の楽曲権利や創作の自由を侵害する所属レコード会社への抗議の意味として自らの名前を封印し、レーベルから搾取されるアーティストの権利を主張する表現として、自分の顔にSLAVE(奴隷)とメイクし、自らの音楽の配信を模索し、当時としては斬新なやり方をいくつも試みました。
でもファンはもとより、彼自身も早く封印した名前を取り戻したかったのではないかと思います。
その機会は2000年にようやく訪れます。前年に件のレーベルとの一部契約が失効したのを機に、名前をprinceに戻すと宣言した彼の記者会見。
June 7th - Prince changed his name to a symbol
On Dec 31, 1999, my publishing contract with Warner expired, thus emancipating the name I was given before birth, Prince, from all long-term restrictive documents.
I will now go back to using my name instead of the symbol that I adopted as a means to free myself from all undesirable relationships.
And as long as middlemen control the means by which the consumer consumes, this will never change. The problem is not a complex one, and the solution is simple. Let the baker make the bread.
I'm a Musician, I make a music.
1999年12月31日に、ワーナーと僕の出版契約は終了しました。
従って、僕が生まれる前から与えられた名前であるPrince は、長きにわたる出版物上の制限から解放されます。
僕は、レーベルとの好ましくない関係から自分自身を解放する手段として決めたシンボルの代わりに、自分の名前を再び使うことにします。
そして、作り手と聞き手の間にいる仲介者(レーベル)が、聞き手に与える音楽をコントロールする限り、この状況は決して変わりません。 問題は複雑なものではありません。解決するのは簡単な事です。 パン屋にはパンを作らせればいいんです。
僕はミュージシャンだから、音楽を作ります。
↑の動画にはありませんが、やっぱり嬉しかったのかこんなお話もしていました。
It was interesting the other day. A friend of mine said 'So what shall I call you now?' and I said 'You can call me Prince' and it just felt good to say that again because I hadn't in so long, so I'm really curious to see what happens next.
この間面白い事があってね。友達が「君のこと、今はなんて呼べばいいんだ?」って言うから「Princeって呼んでいいよ」って言ったんだ。またこの名前を自分でも言えてとても気分がよかった。長らくそうしてなかったからね。だから、これからのことがとても楽しみだよ
マイケルのところへ出戻って彼の断片を追い求めていた時期に、この記者会見での様子を知りました。
長らく記事にすることなく自分のアーカイブに残してあったものですが、マイケルとの関わりについて最後まで多くを語らなかった彼の、マイケルへの静かなリスペクトを表現してくれた(とわたしは信じてるw)数少ない言葉をこの記者会見で残してくれていました。
記者との質疑応答の時、主題とは関係のない、全くもってくだらない質問をされるプリンス。
「仮に、あなたとマイケル・ジャクソンが殴り合いをしたらどちらが勝つでしょうね?」
本来ならば無視してもいいような質問ですが、彼はうまくかわそうとします。
Michael is not a fighter he is a lover
マイケルは博愛主義者だよ(争う人ではなく愛する人だ)
これはマイケルの Girl is mine の中でのポールとの掛け合いにある、”Paul, I think I told you. I'm a lover not a fighter” を引用してるものと思われます。
とっさにこんな答えが出るなんて、おしゃれ~^^なんですけれど、記者たちは、"he is a lover" を言葉通りに受け取らず下品にウケまくります。
薄々察しはつきますが、93年の疑惑が払しょくされぬまま、マイケルの音楽はもちろんその人間性についての評価も高くはなく、日本で言うお騒がせ芸能人扱いをされていたことは否めない。
2000年・・まだあの忌まわしい出来事が起こる前なのに。
マイケルは INVINCIBLE 制作に取りかかっていたとはいえ、公には露出が少なかった時期・・。
ここに集まっていた音楽関係者たちのマイケルに対する露骨なあざけり笑いは、当時の彼に対する風評を如実に表しているようです。
Princeは自分のいった事が違う風に捉えられ、下品な方向に持って行かれることを察したのでしょうか。
彼の顔からすっと笑みが消え、静かな口調で記者たちを諭すように話し始めます。
Can I just say something?
I’ve never really spoken publicly about Michael, but we should all just kind of like chill, because he may know something none of us really know. Just like, well.. let's wait and see. Let's wait it out, you know, just wait it out. You never know, right?
You just never know.
Ultimately, we all gotta come back home, so let's just make a home for everybody.
ちょっといいかな?
僕は公にはあまりマイケルのことを話さなかったけれど、僕ら少し落ち着かなきゃ。彼には僕らが知らない事情があるんだと思う。だから・・静観しよう。見守るのさ。ただ待つんだ。君らだって何も知らないだろう?なんにも知らないんだから。
最後には、僕らみんな家に帰らなきゃならない。だから誰にとってもそういう帰るべき場所を作ってあげないとね。
優しげで静かな口調。でもきっぱりと言ってくれたよね。
You never know, right?
You just never know.
・・・ありがたや。
何かと比べられていた二人。
何かにつけて不仲説が取り上げられていましたね。
もちろんとっても親しく付き合っていた訳ではない、それは確かだw
でも彼らはお互いに敬意を払っていたんだと思います。
お互いの表現のテリトリーを絶対侵さない程度の距離をおき、マイケルはマイケルの、プリンスはプリンスのやりたいように、自分から湧き出る音楽を追及していたんだと思います。
考え方も見せ方も方法も方向性も違うだけで、ただただ自分の創りたい音楽を、ただただ無心に追及してただけ。
その1点のみ共通していれば、同じ創造主同士として敬意を払っていてもおかしくないと思う。
わたしはプリンスの素人だけど、あれだけの膨大な数の作品を生み出せる人だから、その創作意欲がハンパないことぐらいは素人でもわかる。
そして少なくともマイケルにとってプリンスは・・
実際はわからないけれど、羨ましい存在だったかもしれません。
あんな冤罪で無駄な裁判に貴重な時間を奪われ、精神的にも肉体的にも辛い状況に置かれ、満足な曲作りも、練っていた色々なプランも、何もかもストップせざるを得ない過酷な時期・・そんな時でもプリンスは音楽シーンで活躍を続けていました。
そりゃなんだかんだあったでしょうけれど、アーティスト生命を脅かすようなスキャンダルには無縁なその人の、配信の手法や音楽の方向性にその時々では賛否はあれど、その創造性、天才性には誰もが一目を置くまさに生きるレジェンド。
次々に作品を発表し、高く評価されるその人を、羨ましいと感じていたかもしれません。
マイケルとプリンス、ふたりの影響をもろに受けて育ち、どちらも「神」として敬愛するアーティストは少なくありません。
Will.I.Am(Black Eyed Peas)もそのうちの一人。
2008年、マイケルのレコーディングを共にしていた彼がベガスのプリンスのショーに誘われます。
おりしもその日、マイケルからも連絡が入り、彼は敬愛する二人を引合すことを思いつきます。
-----------------------------
2008年に、プリンスからパームホテルのショウに一緒に出ないかって誘われたんだ。
ショウの前にマイケルに電話して言った。「ヘイ、マイク!僕は今ヴェガスだよ!」って。
僕はパームホテルでプリンスと一緒にパフォームするってことを彼に伝えて、そしてよければ来ないかって言ったんだ。
最初彼は自分が行ってもいいものかと少し心配していたから、「プリンスに問題ないか聞くよ。彼がOKって言えば大丈夫でしょ?」って言ったんだ。
で、その晩、僕はプリンスとのパフォームを終えてマイケルと一緒のテーブルにいた。
そしたらプリンスがステージから降りてきて、僕らのテーブルにやってきた。
ベースを弾きながらね!少しの間僕らの前でドゥンドゥドゥン・・てベースプレイをしてくれた!
それは今までの中でホントに最高にクールな経験だったよ!なんてったって、二人はずっと僕のヒーローだったんだから!
僕はMJの新しいアルバムの音を彼と一緒に作っていたんだけれど、その時MJが僕にこんなことを言ったんだ。
「どうして人は僕のことを、プリンスのような本格的なソングライターだと思ってくれないんだろう」
僕はこんなすごい人からそんなこと聞くなんて思いもよらなかったからびっくりしたんだ。
※2010年雑誌vibeのインタビューにて(sourceは無くなっていました)
ベースで挨拶をしたプリンス・・何だからしいなー^^
マイケルってこういうことをぽろって言える人なんですよね。
虚勢をはらないっていうか、本当に素直っていうか。
言われた方は返答に困っただろうけれど、彼の言葉はどうしても受け入れてもらえないその時の現状を如実に物語っていて切ないことこの上ないですが。
でもマイケルにとって彼は、どうやったって無視できない存在であったでしょうし、純粋に彼の音楽も好きだったんでしょう。
それを物語るオルテガの言葉です。
これももうネット上でsourceを探すことはできませんでしたが、おそらく2009年TII公開時のインタビューだと記憶しています。
It was less about competing with Prince and more about respect.
Michael felt God was going to give ideas to the next deserving artist who he felt was Prince.
That’s a true respect, true admiration for Prince.
He mentioned several times how he loved the song “Purple Rain.”
プリンスに対しては競い合うというより、敬意を払っていたよ。
マイケルは、神が素晴らしいアイデアを与えて下さるにふさわしいアーティストは、自分でなければそれはプリンスだって思っていたからね。
それはプリンスに対する本物の敬意、本物の賞賛なんだよ。
彼は何度も言っていた。自分がプリンスの曲、Purple Rainをどれだけ好きかってことをね。
素晴らしいアイデアは選ばれし者だけに贈られる
そうした音楽の神の寵愛をこのふたりはともに受けて
ともに時代を変え、音楽の常識を変え、国境も人種も性別も超えて
多くの人に影響を与え、そのDNAは、彼らが敬愛し尊敬し影響を受けた先人たちと同じように、今のアーティストに脈々と引き継がれ、今の時代の音楽のそこかしこに息づいている
そのエッセンスは、今のアーティストのパフォーマンスの基礎を作っている
だからこそ神はもうふたりの役目が終わったと考えたのだろうか
そんなのは神様の勝手な考えでしかないけれど
大切な人を取り上げられた側としては納得なんてできやしないけど
それでも受け入れるしかないのなら
いまごろ
プリンスは自分の小さな息子にあっただろうか
その手に抱いてkissをしただろうか
マイケルにも会っただろうか
また言葉を交わさずギターで挨拶しただろうか
シャイなふたりはお互いに目を合わさず
でも彼のギターの音に合わせてマイケルはメロディを口ずさんで・・
それがPurple Rainであればいいなと思う

I never meant to cause you any sorrow
I never meant to cause you any pain
I only wanted to one time to see you laughing
I only wanted to see you
Laughing in the purple rain
Purple rain, purple rain
Purple rain, purple rain
Purple rain, purple rain
I only wanted to see you
Bathing in the purple rain
きみを悲しませたり
痛みを与えたりするつもりはなかった
ただ一度だけ君の笑顔を見たかっただけ
紫の雨の中で笑っている君を
紫の雨にうたれる君を
ただ見たかっただけなんだ
R.I.P. Prince
あの時マイケルをかばってくれてありがとう
目をかけ慈しむように豊潤に恩恵を与えたお気に入りは
やはり手元に置いておきたくなるらしい
どうにも待てなくなるらしい
そうしてあの日、わたしたちの大切な彼を連れて行ってしまわれた
そして今また
誰もが思いもよらないくらい急に
彼と同じ年にこの世に落とし給うたもうひとりの天才を
嵐のごとく連れ去ってしまわれた
Prince
世界はその日、彼への敬意を表すために紫に染まった

あの日を嫌でも思い出す
彼を殿下と呼び慕い、彼の音楽を心から愛するファンたちの衝撃を
わたしたちは痛いほどよくわかる
どんなに悲しくて悔しくて心もとなくてさみしいか
ファンにとっては、愛するその人から贈られる音楽はいつも何かを与えてくれていた
生きていることの喜びだとか楽しみだとか
時にはうちひしがれている自分にひとときのやすらぎをくれたり
上手くいかないもろもろを忘れさせてくれたり
あるいは勇気だったりやる気だったり
日常を忙しくすごしている中で
街角で、ラジオから、テレビ番組のBGM
ふとした時に聞こえる大好きなイントロだったりメロディだったり
それだけでもいいことがあったと思える
アーティストから何かしらのギフトをいつももらって生きてきた
ずっと続くと思っていたもの
ずっとそばにあると信じて疑わなかったもの
それが突然になくなる
その人の創りあげる音もメロディもビートも歌声も笑顔も何もかも一瞬にして失う
そしてもう二度と新しいギフトが贈られることはない
すでにもらったものを繰り返し繰り返し
大切に大切に慈しむしかなくなる
大好きな味の大きな飴玉
ゆっくりゆっくり味わわなければならない
もっと沢山味わいたいからといって、せっかちに噛んでしまってはいけない
もう次のご褒美はないのだから
そのことがどれほど悲しいか、辛いか、虚しいか
誰に、どこにぶつければいいかわからない怒りにも似たくやしさ
そのひとが満たしてくれていた心の泉が、急激に干上がっていくような恐怖にも似たさみしさ
Princeのファンの置かれた今の状況
せつなさ、やるせなさ
それは7年前のわたしたちにも突きつけられた現実で
いやと言う程味わった感情だったから
プリンスは一時期、彼の楽曲権利や創作の自由を侵害する所属レコード会社への抗議の意味として自らの名前を封印し、レーベルから搾取されるアーティストの権利を主張する表現として、自分の顔にSLAVE(奴隷)とメイクし、自らの音楽の配信を模索し、当時としては斬新なやり方をいくつも試みました。
でもファンはもとより、彼自身も早く封印した名前を取り戻したかったのではないかと思います。
その機会は2000年にようやく訪れます。前年に件のレーベルとの一部契約が失効したのを機に、名前をprinceに戻すと宣言した彼の記者会見。
June 7th - Prince changed his name to a symbol
On Dec 31, 1999, my publishing contract with Warner expired, thus emancipating the name I was given before birth, Prince, from all long-term restrictive documents.
I will now go back to using my name instead of the symbol that I adopted as a means to free myself from all undesirable relationships.
And as long as middlemen control the means by which the consumer consumes, this will never change. The problem is not a complex one, and the solution is simple. Let the baker make the bread.
I'm a Musician, I make a music.
1999年12月31日に、ワーナーと僕の出版契約は終了しました。
従って、僕が生まれる前から与えられた名前であるPrince は、長きにわたる出版物上の制限から解放されます。
僕は、レーベルとの好ましくない関係から自分自身を解放する手段として決めたシンボルの代わりに、自分の名前を再び使うことにします。
そして、作り手と聞き手の間にいる仲介者(レーベル)が、聞き手に与える音楽をコントロールする限り、この状況は決して変わりません。 問題は複雑なものではありません。解決するのは簡単な事です。 パン屋にはパンを作らせればいいんです。
僕はミュージシャンだから、音楽を作ります。
↑の動画にはありませんが、やっぱり嬉しかったのかこんなお話もしていました。
It was interesting the other day. A friend of mine said 'So what shall I call you now?' and I said 'You can call me Prince' and it just felt good to say that again because I hadn't in so long, so I'm really curious to see what happens next.
この間面白い事があってね。友達が「君のこと、今はなんて呼べばいいんだ?」って言うから「Princeって呼んでいいよ」って言ったんだ。またこの名前を自分でも言えてとても気分がよかった。長らくそうしてなかったからね。だから、これからのことがとても楽しみだよ
マイケルのところへ出戻って彼の断片を追い求めていた時期に、この記者会見での様子を知りました。
長らく記事にすることなく自分のアーカイブに残してあったものですが、マイケルとの関わりについて最後まで多くを語らなかった彼の、マイケルへの静かなリスペクトを表現してくれた(とわたしは信じてるw)数少ない言葉をこの記者会見で残してくれていました。
記者との質疑応答の時、主題とは関係のない、全くもってくだらない質問をされるプリンス。
「仮に、あなたとマイケル・ジャクソンが殴り合いをしたらどちらが勝つでしょうね?」
本来ならば無視してもいいような質問ですが、彼はうまくかわそうとします。
Michael is not a fighter he is a lover
マイケルは博愛主義者だよ(争う人ではなく愛する人だ)
これはマイケルの Girl is mine の中でのポールとの掛け合いにある、”Paul, I think I told you. I'm a lover not a fighter” を引用してるものと思われます。
とっさにこんな答えが出るなんて、おしゃれ~^^なんですけれど、記者たちは、"he is a lover" を言葉通りに受け取らず下品にウケまくります。
薄々察しはつきますが、93年の疑惑が払しょくされぬまま、マイケルの音楽はもちろんその人間性についての評価も高くはなく、日本で言うお騒がせ芸能人扱いをされていたことは否めない。
2000年・・まだあの忌まわしい出来事が起こる前なのに。
マイケルは INVINCIBLE 制作に取りかかっていたとはいえ、公には露出が少なかった時期・・。
ここに集まっていた音楽関係者たちのマイケルに対する露骨なあざけり笑いは、当時の彼に対する風評を如実に表しているようです。
Princeは自分のいった事が違う風に捉えられ、下品な方向に持って行かれることを察したのでしょうか。
彼の顔からすっと笑みが消え、静かな口調で記者たちを諭すように話し始めます。
Can I just say something?
I’ve never really spoken publicly about Michael, but we should all just kind of like chill, because he may know something none of us really know. Just like, well.. let's wait and see. Let's wait it out, you know, just wait it out. You never know, right?
You just never know.
Ultimately, we all gotta come back home, so let's just make a home for everybody.
ちょっといいかな?
僕は公にはあまりマイケルのことを話さなかったけれど、僕ら少し落ち着かなきゃ。彼には僕らが知らない事情があるんだと思う。だから・・静観しよう。見守るのさ。ただ待つんだ。君らだって何も知らないだろう?なんにも知らないんだから。
最後には、僕らみんな家に帰らなきゃならない。だから誰にとってもそういう帰るべき場所を作ってあげないとね。
優しげで静かな口調。でもきっぱりと言ってくれたよね。
You never know, right?
You just never know.
・・・ありがたや。
何かと比べられていた二人。
何かにつけて不仲説が取り上げられていましたね。
もちろんとっても親しく付き合っていた訳ではない、それは確かだw
でも彼らはお互いに敬意を払っていたんだと思います。
お互いの表現のテリトリーを絶対侵さない程度の距離をおき、マイケルはマイケルの、プリンスはプリンスのやりたいように、自分から湧き出る音楽を追及していたんだと思います。
考え方も見せ方も方法も方向性も違うだけで、ただただ自分の創りたい音楽を、ただただ無心に追及してただけ。
その1点のみ共通していれば、同じ創造主同士として敬意を払っていてもおかしくないと思う。
わたしはプリンスの素人だけど、あれだけの膨大な数の作品を生み出せる人だから、その創作意欲がハンパないことぐらいは素人でもわかる。
そして少なくともマイケルにとってプリンスは・・
実際はわからないけれど、羨ましい存在だったかもしれません。
あんな冤罪で無駄な裁判に貴重な時間を奪われ、精神的にも肉体的にも辛い状況に置かれ、満足な曲作りも、練っていた色々なプランも、何もかもストップせざるを得ない過酷な時期・・そんな時でもプリンスは音楽シーンで活躍を続けていました。
そりゃなんだかんだあったでしょうけれど、アーティスト生命を脅かすようなスキャンダルには無縁なその人の、配信の手法や音楽の方向性にその時々では賛否はあれど、その創造性、天才性には誰もが一目を置くまさに生きるレジェンド。
次々に作品を発表し、高く評価されるその人を、羨ましいと感じていたかもしれません。
マイケルとプリンス、ふたりの影響をもろに受けて育ち、どちらも「神」として敬愛するアーティストは少なくありません。
Will.I.Am(Black Eyed Peas)もそのうちの一人。
2008年、マイケルのレコーディングを共にしていた彼がベガスのプリンスのショーに誘われます。
おりしもその日、マイケルからも連絡が入り、彼は敬愛する二人を引合すことを思いつきます。
-----------------------------
2008年に、プリンスからパームホテルのショウに一緒に出ないかって誘われたんだ。
ショウの前にマイケルに電話して言った。「ヘイ、マイク!僕は今ヴェガスだよ!」って。
僕はパームホテルでプリンスと一緒にパフォームするってことを彼に伝えて、そしてよければ来ないかって言ったんだ。
最初彼は自分が行ってもいいものかと少し心配していたから、「プリンスに問題ないか聞くよ。彼がOKって言えば大丈夫でしょ?」って言ったんだ。
で、その晩、僕はプリンスとのパフォームを終えてマイケルと一緒のテーブルにいた。
そしたらプリンスがステージから降りてきて、僕らのテーブルにやってきた。
ベースを弾きながらね!少しの間僕らの前でドゥンドゥドゥン・・てベースプレイをしてくれた!
それは今までの中でホントに最高にクールな経験だったよ!なんてったって、二人はずっと僕のヒーローだったんだから!
僕はMJの新しいアルバムの音を彼と一緒に作っていたんだけれど、その時MJが僕にこんなことを言ったんだ。
「どうして人は僕のことを、プリンスのような本格的なソングライターだと思ってくれないんだろう」
僕はこんなすごい人からそんなこと聞くなんて思いもよらなかったからびっくりしたんだ。
※2010年雑誌vibeのインタビューにて(sourceは無くなっていました)
ベースで挨拶をしたプリンス・・何だからしいなー^^
マイケルってこういうことをぽろって言える人なんですよね。
虚勢をはらないっていうか、本当に素直っていうか。
言われた方は返答に困っただろうけれど、彼の言葉はどうしても受け入れてもらえないその時の現状を如実に物語っていて切ないことこの上ないですが。
でもマイケルにとって彼は、どうやったって無視できない存在であったでしょうし、純粋に彼の音楽も好きだったんでしょう。
それを物語るオルテガの言葉です。
これももうネット上でsourceを探すことはできませんでしたが、おそらく2009年TII公開時のインタビューだと記憶しています。
It was less about competing with Prince and more about respect.
Michael felt God was going to give ideas to the next deserving artist who he felt was Prince.
That’s a true respect, true admiration for Prince.
He mentioned several times how he loved the song “Purple Rain.”
プリンスに対しては競い合うというより、敬意を払っていたよ。
マイケルは、神が素晴らしいアイデアを与えて下さるにふさわしいアーティストは、自分でなければそれはプリンスだって思っていたからね。
それはプリンスに対する本物の敬意、本物の賞賛なんだよ。
彼は何度も言っていた。自分がプリンスの曲、Purple Rainをどれだけ好きかってことをね。
素晴らしいアイデアは選ばれし者だけに贈られる
そうした音楽の神の寵愛をこのふたりはともに受けて
ともに時代を変え、音楽の常識を変え、国境も人種も性別も超えて
多くの人に影響を与え、そのDNAは、彼らが敬愛し尊敬し影響を受けた先人たちと同じように、今のアーティストに脈々と引き継がれ、今の時代の音楽のそこかしこに息づいている
そのエッセンスは、今のアーティストのパフォーマンスの基礎を作っている
だからこそ神はもうふたりの役目が終わったと考えたのだろうか
そんなのは神様の勝手な考えでしかないけれど
大切な人を取り上げられた側としては納得なんてできやしないけど
それでも受け入れるしかないのなら
いまごろ
プリンスは自分の小さな息子にあっただろうか
その手に抱いてkissをしただろうか
マイケルにも会っただろうか
また言葉を交わさずギターで挨拶しただろうか
シャイなふたりはお互いに目を合わさず
でも彼のギターの音に合わせてマイケルはメロディを口ずさんで・・
それがPurple Rainであればいいなと思う

I never meant to cause you any sorrow
I never meant to cause you any pain
I only wanted to one time to see you laughing
I only wanted to see you
Laughing in the purple rain
Purple rain, purple rain
Purple rain, purple rain
Purple rain, purple rain
I only wanted to see you
Bathing in the purple rain
きみを悲しませたり
痛みを与えたりするつもりはなかった
ただ一度だけ君の笑顔を見たかっただけ
紫の雨の中で笑っている君を
紫の雨にうたれる君を
ただ見たかっただけなんだ
R.I.P. Prince
あの時マイケルをかばってくれてありがとう