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「The Innocent Man」とプランB その2

前回の続きです。

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ママは床に崩れ落ちて泣くマイケルに「神様は本当のことをお分りくださっているわ、神様はご存知でいらっしゃるわ」と何度も繰り返したそうです。
マイケルの背中の痛みがひどいので抱きしめる事はできなかったけれど、ジャメイン、ジョセフ、ママの3人はマイケルを囲んで彼を慰めました。
弟にジャケットを着せながらジャメインは言います。

「強くいよう、マイケル。きっとすべてうまくいくから」

その後落ち着きを取り戻したマイケルは皆に謝ってこう言ったそうです。

I'm strong. I'm OK.
「僕は強いよ、大丈夫」


ジャメインは数日後にまた来る事を約束してひとり病院を出ます。
その後、仕事先のホテルで彼は、パジャマと黒いジャケット、ただ今度は白いTシャツを着て、傘を差し掛けるボディガードとジョセフに支えられながら、病院にいた時と同じようにふらふらと足を引きずるようにして歩く弟の姿をテレビで見た途端、電話の受話器をとりあげ、ある人物に電話をかけます。

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ジャメインは万が一のことを考えて、ある信頼できる人物に、正義と言う欺瞞の名の下にありもしない罪による刑を下すかもしれない、この自由の国であるはずの母国の司法から、マイケルと彼の家族ごと追っ手の来ない中東(バーレーン)へ逃がす算段をとりつけていました。
プライベートジェットやパイロット、その他この作戦(「プランB」とジャメインは言ってます)に必要な手はずが全て整っていることを確認するためでした。
マイケルに対するあまりにひどい仕打ちによって、これ以上ないほど痛めつけられている弟の完全に憔悴した姿は、(実際はそんなことは不可能だったでしょうけれど)兄である彼に、本気でこのような計画を考えさせるに十分な動機となったのでした。
(この話はニュースにもなりました。ニュース記事はこちら

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そのジャメインのプランBがいいか悪いかは別にして、わたしはそうまでしてでも、弟をこの苦痛極まりない過酷な状況から逃れさせたいと願う彼の兄としての強い愛情を感じました。
それはそもそもありもしない罪状で、裁判が始まっているという事だけでも信じがたいのに、このうえ受ける必要のない刑を下されるなんて事になったら・・
この裁判自体に不信を抱き司法を疑っていた兄の、弟のために何かやらずにいられなかった気持ちが痛いほど伝わってきました。

ジャメインはテレビのインタビューで意地の悪い質問に対し、そのように考えた理由を語っています。

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ジャメイン:自分の弟に意味も無く手錠がかけられているのを見たとき--9つの罪状で?なんだそれ?それと同時に、いや訴訟の前からだよ、児童相談所が彼を調べて、調査して、何も出てこなかったんだ。
彼もそれは分かっていた。色んな事が同時に行われていて、僕はそれを見ていて--

司会者:怖れていたのね。

ジャメイン:怖れる?

司会者:もしかしたら彼が罪を免れないかもって怖れていた…訴訟が失敗に終わらないかもと。

ジャメイン:公平な審判が受けられないかも、だ。彼が倒れて、病院に行ってから戻ったとき、裁判長が「もし45分以内に戻らなければ刑務所行きだ」と言ったのを聞いてからは。彼らの望みはそういうことなんだ。僕は思ったよ。「これで公平な審判が下るのか?」って。法がどういう風に転がるかは知っている。そして、僕は祈って、祈って、祈って。それからトム・メゼロウ氏と話した。彼は大丈夫だと言ったんだ。だから法を信じることにした。これは判決が下る前のことだよ。誰も知らなかったことだ。


以上、このインタビュー部分はこちらのMJブログさんから一部転載させていただきました。
インタビュー動画も見れるようになっていて、ありがたくも訳してくださっています。
この意地悪な司会者の背景やジャメインが真摯に答えている様子が良くわかると思いますので、ぜひごらんいただければと思います。


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もちろんマイケルにはこんな事知らせていなかった、とジャメインは書いています。

ですが

ひょっとしたらマイケルは、具体的なことは知らなくてもそういう動きを薄々感づいていたかも・・と思ったりしました。

昨年オークションに出品された彼の手書きの歌詞。
これはちょうど2005年のまさにこの裁判中に書かれたとされています。
タイトルの左に「Chorus」とあるので、マイケルは詩というよりもやはり歌詞として書いたのだと思われます。

innocent man mj


The Innocent Man

If I sail to Acapulco or Cancoon(Cancun) Mexico
There the law is waiting for me
and God knows that I’m innocent

If they wont take me in Cairo
then lord where will I go?

I’ll die a man without a country
and only God knew I was innocent now.

もし僕が アカプルコかメキシコのカンクンへ船で渡ったとして
そこでも僕を待っているのは法律だ
神は僕の無実をご存知だけれど

もしも彼らがカイロに僕を連れていかなければ
その時、主よ 僕はどこに行けば?

僕は国のない男として死ぬだろう
神だけは初めから、そして今も僕が無実だと知っていらっしゃるけれど




少し意訳が過ぎているかもしれませんが、ジャメインの記述を読んだ後あらためてこの詞を読むと、やはりマイケルは気がついていたのではないかと思われてならないのです。

彼が別荘を持っていたとされるカンクンへ船で行くというのが、密かに目立たないようにというニュアンスを感じてしまいます・・とはいえ、マイケルはよもや自分のためにDC8プライベートジェットが待機していたなんて思いもよらなかったと思いますが・・
方法はどうであれ、仮に自分が南米に行ったところでアメリカの法律が自分を捕まえる(引渡し条約が締結されているという意味)と思ったのではないでしょうか。
そのような取り決めがない中東、という意味ならカイロという固有名詞が出てきてもおかしくないなと。(彼はバーレーンという具体的なことは知らなかったでしょうから)
誰かわからないけれど、ジャメインが算段をつけてくれたThey「彼ら」が中東に自分を連れて行けなければ、もうどこへ行っても無駄なのだ、どこへ行けば自分の無実が証明できるんだ?という思い・・
このまま万が一冤罪で有罪になってしまったなら、もう自分は死んだも同然だと・・
自分を生み育てた母国であるアメリカの司法によって、無実である自分に何らかの刑が処されるなら、この国はもう母国でも祖国でもないのだと・・

でも神様だけは、ずっと初めから、そして今この瞬間も自分の無実をわかって下さっていると・・

ジャメインの本の中にもママがマイケルに必死で「神様は本当のことをお分りくださっているわ、神様はご存知でいらっしゃるわ」と何度も言ったとありました。


でも裏を返せば神様しか自分の無実をわかっていない・・


世間や下手をすれば陪審員だって、自分が無実だという事をわかってくれずに、かつて自分が世話をした、あるいは助けた人間が手のひらを返して自分を貶める、そんな証言を信じてしまうのではないだろうか・・
そんなマイケルの胸が張り裂けそうな恐れと孤独と不安が、手に取るように伝わってきませんか・・?

もともと特徴のある文字を書く人だけれど、いつにもまして乱れているように見えます。
そう思って見るからでしょうね、本当に切ない・・

マイケルは公判中メゼロウ弁護士に「自分はあくまで法律に従う」と言っていたそうです。
彼の中では必ず真実が明らかになり、自分の潔白が証明される、という母国の司法を信じたい気持ちはもちろんあったでしょうけれども、一方では彼が散々味わってきた、そして今となっては黒人だから受けているのか白人のようだから受けているのかもわからない差別と偏見からくる終わりのないバッシング、不公平で悪意にまみれた報道・・それらの巨大で邪悪な力が働く現実に、本当に公正な審理がなされるのかという恐れに震えたこともあったのではないかと想像してしまいます。

そんな時に、まさに自分の心の叫びをあのような詞に形を変えて綴ったのかもしれないと思うだけで、胸が張り裂ける思いです・・
と同時に、そんな時でも彼はやはり真からのアーティストだったのだと。
メモに「コーラス」と書いてあるのは、この一連の詞を書いている時にも、彼の頭には大人数の合唱隊が歌うゴスペル曲のようなイメージが浮かび、いつか曲として完成させたいと思ったのかもしれません。
彼はそれまで数々の愛をはじめとするメッセージを歌に込めてきましたし、自分が直面した様々な困難でさえも彼にしか創り出すことの出来ない最上の芸術として昇華させてきたのですから・・
コーラスとしてこの詞が重要な部分を担ったかもしれない曲・・
この曲が完成し、自分が歌うその時は、まぎれもなくこの暗闇から抜け出して、まぶしい光を浴びているに違いないのですから・・

ああ、もちろんこれはわたしの勝手な想像の果ての妄想ですけれど。

でも仮にこのメモに書かれた言葉たちが、歌詞であったとするならば、彼のこの作品は形にならなかったけれども、いかに彼がLyricひとつとっても、いかに自身の魂を全身全霊で込めていたかが、今まで以上に理解できたような気がしました。

I always want to do music that inspires or influences another generation.
You want what you create to live, be it sculpture or painting or music.
Like Michelangelo, he said, “I know the creator will go, but his work survives.
That is why to escape death, I attempt to bind my soul to my work.’
And that’s how I feel.
I give my all to my work. I want it to just live.

僕はいつも、自分とは違う世代を動かしたり影響を与える音楽をやりたいと思っているんだ
自分が創造するものには、彫刻か絵画か音楽か、何にしても、長く生きていて欲しいと思うものさ
ミケランジェロのようにね、彼はこう言った
「私は、創作者はいなくなっても、その作品は永く生き続けることを知っている
それゆえ、私は死から逃げるために、自分の魂を作品に縛りつけようと試みる」とね
僕も、そんなふうに感じている
僕の魂のすべてを自分の作品に与えているよ、その作品が永く生き続けてほしいから


source:A continuation of the interview by EBONY


ジャメインのプランBは2005年6月13日のマイケルの無罪判決により決行されることなく、彼がこうして公にするまでは誰も知りえなかった話です。


MJGala Dinner in Dubai2
これは裁判の後、正式にドバイを訪れた時のマイケル


家族の話を何もかも鵜呑みにはしないという話を冒頭でしましたが、確かに他の記述では「うーん・・」とすぐに賛同できない部分もありましたし、彼の記述をめぐってやはりなんだかんだと揉め事が起こりそうな予感もなきにしもあらずで、少し今後が心配な雲行き・・。
ただわたしのような一ファンが判断できませんし、またすべき事ではないと思っていますのでこちらには書きません。
読んだ方にもそれぞれの感想があって当たり前ですものね^^

ですが、少なくとも今回抜粋した部分に関しては、全面的に信頼できると思えました。
数多くのくだらない嘘や噂・・その中にはひょっとしたら本当のこともあるかもしれなくて、でも本当の意味で全くの完璧な人間などいないと思っていて、もちろんマイケルにもそれは言えると思うのですが、ただ「肌の誤解」と「彼が罪に問われること自体間違いであった」という、このふたつだけは絶対正しい真実を伝えていきたいと思う自分でしたから、あえてこれらに言及してくれたジャメインに感謝です。
ジャメインに感じていた複雑な思いも、固い結び目が解けるがごとく少し変化したように思います。

そして全面信頼のもうひとつの理由として、マイケルのそれまでちょっと謎だった「The Innocent Man」とジャメインのプランBが、わたしの中でパズルのピースが合うがごとく繋がったことが大きな決め手になりました。
マイケルが書いた言葉は、間違いなく彼の心を映したものだから・・

マイケルの周辺はとにかく複雑で、彼のことを語る人の何が本当で何が計算で何が嘘なのかなんて考えると大変です(苦笑)


だからこそわたしは最後は彼の残した言葉と音楽を道しるべにして



彼を大切に想っていきたいと思います




最後に、今回抜粋したジャメインの記事はこんな言葉で終わっています

I remember what Michael said at the start of these proceeding in 2003:
"Lies run sprints but the truth runs marathons. The truth will win this marathon "
The truest lyric he never sang.
私は2003年この訴訟の初めにマイケルが言った言葉を思い出します
「嘘は短距離走のような速さで瞬く間に広まるが、真実はマラソンのように時間がかかるものだ
このマラソンでは、真実こそが勝利する」

真実を綴った歌詞の歌を彼が歌う事はなかったけれど・・






【関連過去記事】
「本当に書きたかったことを(1)」序章
「本当に書きたかったことを(2)」白人願望説
「本当に書きたかったことを(3)」尋常性白斑
「本当に書きたかったことを(4)」ネバーランドの真実
「本当に書きたかったことを(5)」冤罪・1993年訴訟の悲劇
「本当に書きたかったことを(6)」冤罪・1993年訴訟の結末
「本当に書きたかったことを(7)」冤罪・2005年裁判
「本当に書きたかったことを(8)」冤罪・2005年裁判での無罪判決

「The Innocent Man」とプランB その1

先日ジャメインがマイケルの本(You are Not Alone: Michael, Through a Brother's Eyes)を出版しました。

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基本わたしはマイケルの家族が彼のことを何でも理解していたとは思っていなくて、自分のことを考えても、何から何まで、特に仕事の事など家族と共有しない場合が多いですし、彼の場合は特に複雑だったでしょうし、もちろんそれはわたしのような一般人と比較してはいけないとは思いますが、でもそれでもやっぱり家族が知るマイケルは彼の側面の一部でしかないと。
四六時中彼のそばにいたわけでもないですしね・・
でもそれが家族だったりしますよね。ある程度大人になったり、それぞれが家族を持ったりすれば年に1.2回集まる程度というのは珍しくないことですもの。

今まで出版されている家族の本に書かれているマイケルも、おそらく書かれていることは本当でしょうけれど、その家族に見せたマイケルの側面は「家族用」のものかもしれなくて、そういう意味でそれが本当の彼の真実だったかどうかは、やはり彼のみぞ知ることなのではないかというスタンスで見ています。
ですから家族が言う事はなんでも絶対!とは思わないようにしています。
おそらくそう思っているファンは少なくないでしょうね。

家族ですから当然私情が入りますし、その家族の立ち位置によって見方も変わるでしょうし、何よりも家族だからこそ、「こうであって欲しい」という気持ちも強くなるでしょう。
でもそれこそが家族の紛れもない彼への愛情の証なのだと理解しています。

家族の誰が書いたものだとしても、今となっては動機はなんであろうとも、それぞれの主観や推測はあるにしても、そこに書かれている言葉たちには、マイケルへの愛が込められていると信じてはいます。


今回のジャメインの本は日本語翻訳が出たなら読んでみたいです。
洋書で読むのはエベレスト登頂レベルの困難さですから(笑)

ですが、ジャメインは出版にあたり雑誌のインタビューに応じ、本の内容の一部抜粋を許可してくれています。

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それを読んだ時、彼がマイケルのために書き残しておかなくてはならない、そしてそれを読んで人々がきちんと知らなければならない、あるいは知っていたとしても決して忘れないでいて欲しいと切に願ったであろう、その偽らざる兄としての気持ちを痛いほど感じた箇所がありました。

今現実にはあの医師の裁判が着々と進められていますが、あの医師にどのような判決が下ろうとも、彼は自分が関わった今世紀最大の事象(事件なのか事故なのかを争っていますのであえて)の責任を深く考えてもらわなければならないでしょう。
なぜなら紛れもなく彼は、ひとりの、その人は本来まだここにいるべき人で、こんなに早く失ってはいけない人でした-真のアーティストが不自然にこの世を去った事に大きく関わった当事者なのですから・・。

同じ裁判でもマイケルの場合は、見に覚えもなくありもしない出来事を捏造されでっち上げられ陥れられ、にもかかわらずメディアからは正当な報道もなされず、アーティスト生命どころか彼自身の生命をも危ぶまれるほどの打撃を心身ともに受けるという、試練と言うにはあまりにも理不尽な地獄でした。

兄がその地獄の中で戦う弟のために何を思ってどう感じていたか・・
一部抜粋した要約です。

【ご注意】相当思いいれが強い意訳と要約だということを最初にお断りしておきますねw
しかもわたしの独断的解説&意見も入っていますので、妙な先入観なしに知りたい方はきちんとした原文を全文お読みになられることをお薦めします(おいおいw)
ぜひ下記からジャンプ願いますね^^
Source:Exerpt from You Are Not Alone by Jermaine Jacksonより一部抜粋P47~48

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ジャメインは2005年3月10日の朝、マイケルが自宅のシャワー室から出る際、転んで背中を強打したというママからの電話で病院へ向かいます。
青い柄のパジャマズボンに黒いジャケット姿のマイケルはジャメインに「やぁ、Erms」(Jermainをこう呼んでいたみたいです)と弱々しく挨拶をして「大丈夫かい?」という問いかけに「背中がひどく痛いよ」と答えたそうです。

ジャメインはこの裁判で、日を追うごとにマイケルが消耗してゆく姿を見ながら、この朝の出来事は人から見たら単なるアクシデントに思えるかもしれないけれど、連日心を引き裂かれるようなダメージを受けている弟にとっては単なるアクシデント以上の大ダメージ・・まさにファイナル・パンチに匹敵するように思えたのでした。

ジャメインがそれまで見たことのないほど悲しみにうちひしがれた顔のマイケルが、昨日の辛い法廷証言の話をし始めました。

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実はこの日の前日は、生きる希望を取り戻せるようマイケルが寄り添って世話をした余命いくばくもなかった癌患者の少年・・今はマイケルを地獄に突き落とす冤罪を大人と一緒になって作り上げた張本人のギャビン・アルビーゾが検察側証人尋問で証言を行った日でした。
スネドン検事の質問に答えるギャビンは、平然とおぞましい作り話を語り、マイケルとの親密さは彼から強要された演技だったというような内容の証言を次から次へと話していきます。

その信じられない言葉の数々をマイケルは一体どんな気持ちで聞かねばならなかったのか・・
目の前の恐ろしい現実にどれだけ打ちのめされたかは想像に難くありません。

「昨日の法廷証言」

それはまさしくマイケルにとっては悪夢だったに違いなかったでしょう。

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They are putting me through this to finish me...to turn everyone against me.
It's their plan..It's a plan.
What have I done but good? I don't understand..

「彼らは僕を終わらせるためにこんな目にあわせる・・みんなが僕に敵意を持つようにしてる
これが彼らの考えだ・・たくらみなんだよ
ここまでされるほどの何を僕がやったというの? 僕にはわからない・・」


ジャメインは、マイケルが、ただ人を楽しませるために音楽を創り、希望と愛と人類愛、そして互いにどうあるべきかを認識させるためのメッセージを広めることしかやっていないことをわかっていましたし、子供を傷つけるどころか、誰よりも子供の事を考えていたマイケルが子供の部屋に入ることは、サンタクロースが子供のプレゼントを置くために部屋に入ることと同じだというのに、しかもこんな馬鹿馬鹿しい裁判の正当性を証明する証拠など何一つないことを、警察もFBIもSONYもわかっているのというのに
(2009年にFBIはMJの容疑に関わる証拠は何一つ見つからなかったとして正式に声明を出し、資料を公開しました)

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彼は初めからこんな裁判など茶番としか思えないと思っていました。

昨日の法廷証言のストレスと今日の背中の痛みが、もう感情の抑制も出来ないほどのダメージを彼に与えたのは間違いなく、彼にとってはすでに限界だったのだとジャメインは書いています。

Everything they say about me is untrue. Why are they saying these things?
「彼らが言う事は全部真っ赤な嘘だ・・どうして彼らはあんな事をいうの?」


ママが何かを言おうとするのをマイケルは手で制し、なおも続けます。

They're saying all these horrible things about me, I'm this. I'm that.
I'm bleaching my skin. I'm hurting kids. I would never..It's untrue. It's all untrue.
「彼らは僕について、ああだこうだと身の毛もよだつような事を言っている・・
肌を漂白しているとか、子供を傷つけているとか、僕が断じてしていないことを・・嘘だよ、全部嘘っぱちだ」


ジャメイン曰く、「普段はめったに感情を出さないマイケル」でしたが、ついにその目から涙があふれます。

They can accuse me and make the world think they're so light, but they are so wrong..they are so wrong.
「彼らは僕を責めて、彼らのほうがが正しいのだと世界に思わせている・・でも彼らは間違っている・・本当に間違っているんだ」


そう言うと、自分の着ていたジャケットを脱ぎだします。
彼はジャメイン、両親を前にしてすすり泣きながら言いました。

Look at me!...Look at me! I'm the most misunderstood person in the world!
「僕を見て!・・よく見てよ!僕は世界でもっとも誤解された人間だ!」


ジャメインはそこで初めて白斑であるマイケルの肌を見てショックを覚えます。
(治療のために素肌にジャケットを羽織っていただけなのでしょう)ジャケットを脱いだ彼の裸の上半身は、まるで白人の白い肌にコーヒーを飛び散らせたかのような状態だったと書いています。

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マイケルが尋常性白斑だということは、1993年にオプラのインタビュー時に彼が告白するまで、一部の家族しか知らない事実でした。
わたしはおそらくジャメインはその時に初めて知ったのではないかと思っています。
なぜならば、1991年に彼の「Word To The Badd!」という曲が発売前にリークされますが、その内容はひどくショッキングなものでした。
同時期にマイケルは「肌の色が白か黒かなんて関係ないんだ」という人種差別を批判する「Black Or White」をリリースしていましたが、ジャメインの曲は、「君は変わってしまった。もとの肌の色が気に入らないからかい?」という痛烈にマイケルを非難している、と世間が大騒ぎするような歌詞でした。

ゴシップ誌が書き立てるだけでもマイケルには相当なストレスがかかったはずで、でも彼は自分がこれこれこういう病気だからと事あるごとに釈明のような事をして、人々の関心が自分の作品やアートから肌問題に集中する事を嫌ったがために、何も言わずにできるだけ外野をかわしてきたのではないかと思うのです。
それが実の兄が弟を疑っているかのような歌詞の曲を出すなんて・・
現在この歌詞は恋人に対して歌っている内容のものに訂正されていますが、当時わたしはしばらくジャメインが大嫌いでした。

ジャメインは(今回出版した本にも少し書いています)80年代後半からマイケルと疎遠になり、特にマイケルがジャメインと連絡を取りたがらなくなり、その間兄弟はどうしてもすれ違い、ジャメインは自身のソロアルバムのプロデューサー問題でマイケルともめたりして、ちょうどこの時期にマイケルとうまくコミュニケーションがとれないイライラや、彼に対する怒りをマイケルに知らせたくてこの曲を書いたと後に語っています・・。
ジャメイン自身もまだ若かったと思いますし、もともと目立ちたがりで自分にスポットを当てたいタイプの人でしたから、絶えずマイケルと張り合おうとしたり批判したりしていましたけれど、肌の色の事は致命的な発言でした。


このことはマイケルのファンがジャメインに対して不信感を持つ大きな理由になったとわたしは思っています。
あんな事がなければ、今回の本のことももう少しストレートに捉えられたかもしれませんが、ラトーヤもジョーもしかりですが、個性の強いこの3人はマイケルのファンから冷静に見れない原因を過去に作っていますから、応援と同じぐらい多くの批判も受けてしまうのですね・・

そんなことがありましたが、その2年後マイケルが病気のことを世間に知らせたことにより、ジャメインもマイケルの苦しみをようやく理解し、怒りに任せて弟を疑ったことを悔いたのではないでしょうか。
それ以降、マイケルのゴシップなどには猛然と先頭に立って彼をかばうジャメインがいましたから・・。
きっとマイケルもそれを理解して許したはずですし、やっぱり彼にとってジャメインは大好きなお兄さんだったと思います。

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とはいえ、ジャメインが直にマイケルの肌の状態を見たのは、彼が書いているように後にいわゆるマイケルのパジャマデイと呼ばれてしまう日の朝だった、というのがわたしには驚きでした・・
そういう意味で、冒頭に書いたように家族の誰もがマイケルのことを隅から隅まではわかっていないと思うわけです。
それが良いとか悪いとか、あるいは愛情があるとかないとかという話とは別次元だということをお断りしておきますね。

そして、これはあくまでわたしの推測に過ぎない感想なのですが、ジャメインが実際のマイケルの肌の状態を見て、いかに世間が完全に間違った誤解を伝言ゲームのように噂し続けているか、あるいはいかにメディアが悪意を持ってマイケルを傷つけているかを、今度こそ本当に痛いほど実感したからこそ、本の内容に、2005年のあのパジャマデイの日に一体何が起こっていたかをあえてはずさずに書いたのではないかと・・。

マイケルに浴びせられる沢山の嘘や噂。
数え上げればきりがないそれらの中で、マイケルがどうしても耐え難かったふたつの真っ赤な嘘。

I'm bleaching my skin. I'm hurting kids. I would never..It's untrue. It's all untrue.
肌を漂白しているとか、子供を傷つけているとか、僕が断じてしていないことを・・嘘だよ、全部嘘っぱちだ



1993年 オプラ・ウィンフリーショウでのコメント
I'm a black American, I am proud of my race. I am proud of who I am.
I have a lot of pride and dignity.
僕はブラックアメリカンです。黒人である事、自分が何者であるかを誇りに思っています
僕は大きな誇りと尊厳を持っています


コントロール不可能な病気による肌の変色・・その辛い現実を受け止め、結局その肌の色にとらわれることでひき起こされる差別を無くそうと、その辛さも悲しみも作品に昇華させ、魂の全てを注ぎ込んで表現し続けてきた彼。
なのにフォーカスされるのは黒から白へ変わったという表面上の変化だけ。
自分自身のアイデンティティすら否定され、誇りも尊厳も容赦なく踏みにじられる。
「白人に憧れて肌を漂白した」というまことしやかに繰り返されるこの噂が、どれだけ毎日彼を苦しめたか。

マイケルがその人生をかけて常に大切に守ろうとしてきた小さくて弱い存在である子供たち。
彼らは無邪気さという子供の特権を謳歌する事が出来なかったマイケルの、心ゆくまで無邪気に振舞う事を許される仲間であり友人でもあったと思いますが、さらに言うなら子供は彼にとって、疑いや恐れや嫉妬や傲慢といった争いや憎しみの火種の元となる感情からかけ離れた、無垢で愛情深く好奇心に満ちた光のような存在だったのではないでしょうか。
その光は時として彼にインスピレーションを与え、時として安息を与える、まさに神であり創造の源であったのだと思います。
事あるごとにそんな子供の大切さを説き、現実に辛い目にあっている子供を助け、自分がどれだけ子供たちを愛しているかを表現してきた彼の、そのあまりにも大きく深く神聖な想いと愛情は、普通の、特にもともと彼を快く思わない大人には奇異に映り、なかなか理解されずにいたあげくの結果が、彼の一番大切な光である子供を傷つけたというでっち上げでした。
それは子供を傷つけるぐらいなら自分の手首を切ったほうがマシだと公言する彼を苦しめる一番効果のある嘘でした。
彼が毎日通わなければならない法廷は、子供により捏造された嘘で成り立ち、しかも当の子供から糾弾されるという、二重の苦しみと絶望を味わされるまさに地獄だったはずです。

このふたつの嘘が完全な間違いである事を、そして面白おかしく報道されたあの朝のマイケルの真実を、いまだわかっていない人にこれだけははっきりとわからせる、知らせる、そして絶対に忘れさせないように、風化させないように書き残す、というジャメインの固い決心のようなものがわたしには感じられます。

いまだに彼につきまとう特にこの二つの大きな偏見だけは、弟の代わりに自分が声を上げて取り除きたい、無くしたいと、心の底から願い、そして行動に移した執筆ではないかと。



長くなりました。

続きます

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gonpee2008

Author:gonpee2008
名前はakim
家族は主人と猫のゴン&ピー
いたってノーマル・・だけどMJバカw

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