The reason I love his dance.

「なんかかっこいいでしょ?こんなのあんた好きそうだからさぁ」
そう言って結婚祝いに友人から贈られたこの絵はうちのリビングの正面の壁に飾ってあるものです。
COME BACK DANSING!1950
1950年代のダンスよ、もう一度!
うん、好き好き^^
アメリカのモノクロムービーに出てきそうな感じでいいわぁ、ありがとう♪
ぐらいしか感想はなくて、でも部屋の雰囲気がたいそうよくなるので目立つ場所に飾って、その後何年も何年も特別どうということなくすっかり空気のような存在になっていったこの絵。
ある日デパートの催事場で行われていた展示会。
何気に覗いたわたしの目に飛び込んできたリビングの絵と同じ写真。
そこではじめてその絵がフレッド・アステアの1953年主演のミュージカル映画「The Band Wagon」でのダンスナンバー「The Girl Hunt Ballet」の1シーンだったということがわかったのでした。

Fred Astaire

言わずと知れたマイケルが尊敬していたHEROのうちのお一人。
この「The Girl Hunt Ballet」がマイケルの「Smooth Criminal」はもちろん、彼のパフォーマンスやSFに多くの影響を及ぼしていることはご存知の方も多いでしょう。
The Band Wagon - Fred Astaire and Cyd Charisse

まんまです^^
この動画の冒頭、ギャングの入店の動きもSmooth Criminalで見覚えありますし、アステアが入店する時の動きは「You Rock My World」のダンスムーブです。
この動きはSmooth Criminalのライブパフォーマンスでは振り付けにもなっていますし、店内で繰り広げられるギャングとの格闘ダンスシーンもSmooth Criminalを彷彿させる雰囲気ばかり。(てか元がこっちですけれどw)

それだけではなくアステア作品の中の彼の動きを見ると、マイケルっぽい♪というのが沢山あるのですね。
アステアの1935年の映画「Top Hat」でのソロダンスシーンを見ると、彼はステッキを巧みに使って踊るのですが、途中ステッキを蹴り上げる足の動きが、クリス・タッカーが反対側の足でやってしまうマイケルのキックに見えたり、アステアがターンを何度かした後に前かがみで静止するポーズなんて、マイケルの有名な「Billie Jean」でのターンの後のつま先立ちで静止する動きのもとになっているんじゃないかと思うぐらい。

ミュージカル「Swing Time(有頂天時代)」のアステアのシャドーダンス・・こんな演出見覚えありの人手を上げて^^
アステアはSmooth CriminalのSFを撮影時はまだ存命していましたが、その後4ヶ月ほどでこの世を去りました。
奇しくも憧れの人へのトリビュートはオマージュとなりました。
Michael Jackson & Fred Astaire: The Master & His Teacher
アステアのダンスの優美さといったら。
指先、足先にまできれいに神経が行き届いた動き。
静と動のコントラスト。
踊りの中の一つ一つのセグメントに、ギクシャクしたつなぎ目が一切感じられない一筆書きのようななめらかさ。
上体の軸がぶれないバランスのとれた軽い身のこなし。
まさにマイケルそのもの!
わたしがマイケルのダンスを見ていつもうっとりするのが、このしなやかな優美さです。
パフォーマンス中、どこを切り取られてもどの瞬間を撮られても、指先まで足先まで美しく優雅でしょう?
他のダンサーの、上手だけど、Powerは感じられるけれど、どことなく力だけで押すような筋肉だるまのダンスというか、力強いといえば聞こえがいいですけれど、力こぶぱんぱんでそれがかえって重さを感じる踊りよりも、重力など感じていないかのように、複雑なセグメントを難なくやってのけてしまう、まるで滑るようになめらかで品のあるマイケルのダンスは「芸術(Art)」を鑑賞しているのと同じ気持ちになるのですね。
マイケルは幼い頃からダンスを習ったことなど一切なく、まさに神様から贈られた天性の才能があったのだと思いますが、それだけではなくただただ憧れだったジェームズ・ブラウン(過去記事)のファンクステップを食い入るように見て真似たのと同時に、やはり大好きなアステアやサミー・デイビスJr(過去記事)のタップや所作も研究し練習し、そうやって彼らのエッセンスを自然に吸収していったのですね。
マイケルは若い時からずっと彼らに夢中だったとよく話しています。
■1987年BADツアーで来日中に受けたインタビュー
I've always love to dance.
When I was just real little I used to watch Sammy Davis, Fred Astaire, James Brown...and just dancing about the house.
いつだって僕はダンスが大好きだ。
ほんの小さい頃は、サミー・デイヴィス、フレッド・アステア、ジェームズ・ブラウンを見ては、とにかく家中で踊ってたんだよ。
■2001年 TV Guide インタビュー にて、若い世代から真似られることに関して聞かれて
I have no problem with them imitating [me].It's a compliment.
Everybody has to start out looking up to someome.
For me it was James Brown, Sammy Davis Jr., Jackie Wilson, Fred Astaire, Gene Kelly.
まねされることには何の問題もないよ。光栄だね。
だれでも誰かを尊敬することからスタートするものさ。
僕にとってはそれがジェームズ・ブラウン、サミー・デイビスJr、ジャッキー・ウィルソン、フレッド・アステア、ジーン・ケリーだったんだ。
■2002年 VIBE インタビュー
I'm crazy about Sammy Davis Jr., Charlie Chaplin, Fred Astaire, Gene Kelly, Bill “Bojangles” Robinson-the real entertainers, the real thing, not just gimmicks, showstoppers.
僕が夢中なのは、サミーデイビスJr、チャーリーチャップリン、フレッド・アステア、ジーンケリー、ビル”ボージャングル”ロビンソン*・・そういう本当のエンターテイナー、本物の、小細工なしのショー・ストッパー*(賞賛の拍手が鳴り止まずショーを中断させてしまうほどの天才)たちなんだよ。
*Bill"Bojangles"Robinson・・アステアやサミーにも影響を与えた伝説の黒人タップダンサーです。でもサミーの十八番である「Mr.Bojangles」の歌に出てくるBojanglesではないようです。歌の中の老人が自らを「かつてはBojanglesと呼ばれたこともある」というのは、天才Bojanglesぐらいイカしたダンサーだったのさ、という意味なのでしょう(プチ情報w)
*ちなみにIT関連でこの言葉は、「ハードおよびソフトの致命的な問題やバグ」のことを言って、まったくもってよくないイメージなのですw エンターテイメント界ではいい意味で使うのですね。(プチ情報2w)
ケニー・オルテガもインタビューで語っていました。(ソースはこちら)
「僕は、マイケルは(ジーン・ケリーより)フレッド・アステアのエレガンスさに影響を受けていたと思う。
マイケルはサミー・デイビスJrやジェームス・ブラウンやジュディ・ガーランドやフレッド・アステアを敬愛していた。
でも、彼らと同じになったということではない。
マイケルは彼らから何か触発されただろうけれど、あくまで自分で全てを作ったんだよ」
アステアの洗練された美しいダンス
サミーの粋で品のあるスマートなタップ
JBが持つファンキーでソウルフルなステップ
少なくとも彼らから学べるだけ学んだあとは、それら彼らのエッセンスは全て自分の血となり肉となり細胞となって、もともとの天性の才能と溶け合い融合し、他のだれでもない唯一無二の自分だけの芸術に昇華させた。
踊りの基礎だといわれるタップや、BADのSFでみられたウエストサイドストーリーを髣髴とさせるジャズダンスや、宇宙遊泳のようにかかとを軸にゆっくりまわるムーンウォークや、バックスライド(今一般に言われているマイケルのムーンウォーク)を生んだ黒人のストリートダンス、これらも一目見れば自然と体が反応してしまう彼が、そこに練習と言う努力を足した結果、時に美しく、時にエネルギッシュに、正確で緻密で、だけどそれだけじゃない魅せるダンスを自分のものにしてしまった。
しかも彼は黒人特有の素晴らしい身体能力ゆえに、すぐに発達しやすい筋肉を持っていましたが、特に上半身の筋肉が発達しすぎると美しくみえないとして、出来るだけ鍛えるのはインナーマッスルのみ、という徹底ぶりをもって踊っている時の見た目をもコントロールしていました。
確かに胸筋が発達しすぎると、上体が大きくなりすぎて繊細な踊りにはそぐわない体型になりますし、何といっても激しい動きから静止した後の呼吸状態がわかりやすい。
余談ですが、TIIでのドリルから「They Don't care about us」へ移る一瞬の静止時、バックダンサーは胸が大きく上下に動き、その呼吸の激しさが伺えますが、マイケルの胸は少しも揺れない。
これはマイケルが持つ特別な呼吸法によって制御されているのだと聞いたことがありますが、それに加えて筋力はつけても必要以上に上体に筋肉をつけない彼の肢体とのなせる技。
まさに完ぺき主義者のプロ意識を垣間見れた瞬間でしたよね。
彼のその必要以上に筋肉を発達させない細身の肉体が優雅さを生むのです。
わたしが彼のダンスを好きな理由のひとつです。
弱々しい細さではなくしなやかな筋肉を軽くまとったかのような彼だから、よけいに手足の伸びやかさが美しく見えるし、それこそただ歩くだけの動きでもきちんときれいでしょう?
マイケルはセクシーではあるけれど、それは一般的に言われている色気というより、ミケランジェロのダビデ像のような、裸体なんだけど下品じゃないというか。
例えば「In The Closet」のような官能的な踊りであっても、どうしてもその中に品を感じてしまうのは、やはり体つきが大きく関係しているような気がします。

アステアやサミーにもそれを感じます。

アステアは前述の「The Band Wagon」内のダンスナンバー「The Girl Hunt Ballet」で、相手役のCyd Charisse と踊っていますが、セクシーな絡みというよりは紳士的に彼女をエスコートし、彼女の魅力を際立たせてあげているように見えるのは、やはりアステアの細身の体が生み出す洗練さゆえではないかなと。

ショーで軽々とタップを踏むサミーのパフォーマンスから感じるのは、やはり細身の重力を感じさせないその姿だからこそかもし出される小粋で上品でスマートな優美さでした。
あのクインシー・ジョーンズをして「フレッド・アステアやサミー・デイビスJr、ジェイムズ・ブラウンを同時に連想させる至芸者」と言わしめたマイケル。
尊敬して憧れた多くのショーストッパーたち・・
その偉大な先人たちの誰にも真似できない真髄を彼はいとも容易く手に入れた。
一筆書きのような途切れ感のない流れるようなきれいな動き。
動と静のコントラストが絶妙で、激しい踊りの最中でも彼の手足の運びはスローモーションのように優雅。
にもかかわらず、音とのタイミングは気持ちのいいほどぴったり決まる。
顔や首が一番美しく見える角度に、手足は伸ばされようが曲げられようが絶対に美しく見える位置へ寸分たがわず「ここ!」というポジションにぴたっぴたっと決まる。
その踊りはもはや「振り付け」ではなく、彼の「呼吸」そのもの。
I know my fate is to show others that this silence, this light, this blessing is my dance.
I take this gift only to give it again.
この静寂と光と祝福こそが僕のダンス、そしてそれを人に魅せることが自分の宿命
この(神からの)ギフトをまた人々に分け与えるだけ
MJ Dancing the Dream内「Dance of Life」より抜粋
2010年8月15日、ニューヨーク州サラトガ・スプリングスの国立ダンス博物館。
1987年に創設されて以来、主としてバレエやモダンダンス界での功績を認められたダンサー・振付師が対象で、アステアや伝説のタップダンサー、ビル"ボージャングル"ロビンソンを含め43名が殿堂入りしていました。
マイケルはその44人目としてPops/Rock界から快挙ともいえる初の殿堂入りを果たしました。
Michael Jacksonという、このリズムに魅入られた天才が神から贈られた天賦の才能を惜しみなく使って、自身の宿命に従いわたし達に魅せてくれるダンスは、彼が敬愛した偉大な先人たちの魂を受け継ぎながら、自らのオリジナルとして進化させ昇華させた、最高に優雅でファンキーで洗練された超一流のエンターテイメント。
それが証明された殿堂入り・・なのでしょう。

I've always love to dance.
When I was just real little I used to watch Sammy Davis, Fred Astaire, James Brown...and just dancing about the house.
いつだって僕はダンスが大好きだ。
ほんの小さい頃は、サミー・デイヴィス、フレッド・アステア、ジェームズ・ブラウンを見ては、とにかく家中で踊ってたんだよ。
You are a true genuine showstopper!
Your dance lives forever..
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