「The Innocent Man」とプランB その2
前回の続きです。
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ママは床に崩れ落ちて泣くマイケルに「神様は本当のことをお分りくださっているわ、神様はご存知でいらっしゃるわ」と何度も繰り返したそうです。
マイケルの背中の痛みがひどいので抱きしめる事はできなかったけれど、ジャメイン、ジョセフ、ママの3人はマイケルを囲んで彼を慰めました。
弟にジャケットを着せながらジャメインは言います。
「強くいよう、マイケル。きっとすべてうまくいくから」
その後落ち着きを取り戻したマイケルは皆に謝ってこう言ったそうです。
I'm strong. I'm OK.
「僕は強いよ、大丈夫」
ジャメインは数日後にまた来る事を約束してひとり病院を出ます。
その後、仕事先のホテルで彼は、パジャマと黒いジャケット、ただ今度は白いTシャツを着て、傘を差し掛けるボディガードとジョセフに支えられながら、病院にいた時と同じようにふらふらと足を引きずるようにして歩く弟の姿をテレビで見た途端、電話の受話器をとりあげ、ある人物に電話をかけます。

ジャメインは万が一のことを考えて、ある信頼できる人物に、正義と言う欺瞞の名の下にありもしない罪による刑を下すかもしれない、この自由の国であるはずの母国の司法から、マイケルと彼の家族ごと追っ手の来ない中東(バーレーン)へ逃がす算段をとりつけていました。
プライベートジェットやパイロット、その他この作戦(「プランB」とジャメインは言ってます)に必要な手はずが全て整っていることを確認するためでした。
マイケルに対するあまりにひどい仕打ちによって、これ以上ないほど痛めつけられている弟の完全に憔悴した姿は、(実際はそんなことは不可能だったでしょうけれど)兄である彼に、本気でこのような計画を考えさせるに十分な動機となったのでした。
(この話はニュースにもなりました。ニュース記事はこちら)
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そのジャメインのプランBがいいか悪いかは別にして、わたしはそうまでしてでも、弟をこの苦痛極まりない過酷な状況から逃れさせたいと願う彼の兄としての強い愛情を感じました。
それはそもそもありもしない罪状で、裁判が始まっているという事だけでも信じがたいのに、このうえ受ける必要のない刑を下されるなんて事になったら・・
この裁判自体に不信を抱き司法を疑っていた兄の、弟のために何かやらずにいられなかった気持ちが痛いほど伝わってきました。
ジャメインはテレビのインタビューで意地の悪い質問に対し、そのように考えた理由を語っています。
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ジャメイン:自分の弟に意味も無く手錠がかけられているのを見たとき--9つの罪状で?なんだそれ?それと同時に、いや訴訟の前からだよ、児童相談所が彼を調べて、調査して、何も出てこなかったんだ。
彼もそれは分かっていた。色んな事が同時に行われていて、僕はそれを見ていて--
司会者:怖れていたのね。
ジャメイン:怖れる?
司会者:もしかしたら彼が罪を免れないかもって怖れていた…訴訟が失敗に終わらないかもと。
ジャメイン:公平な審判が受けられないかも、だ。彼が倒れて、病院に行ってから戻ったとき、裁判長が「もし45分以内に戻らなければ刑務所行きだ」と言ったのを聞いてからは。彼らの望みはそういうことなんだ。僕は思ったよ。「これで公平な審判が下るのか?」って。法がどういう風に転がるかは知っている。そして、僕は祈って、祈って、祈って。それからトム・メゼロウ氏と話した。彼は大丈夫だと言ったんだ。だから法を信じることにした。これは判決が下る前のことだよ。誰も知らなかったことだ。
以上、このインタビュー部分はこちらのMJブログさんから一部転載させていただきました。
インタビュー動画も見れるようになっていて、ありがたくも訳してくださっています。
この意地悪な司会者の背景やジャメインが真摯に答えている様子が良くわかると思いますので、ぜひごらんいただければと思います。
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もちろんマイケルにはこんな事知らせていなかった、とジャメインは書いています。
ですが
ひょっとしたらマイケルは、具体的なことは知らなくてもそういう動きを薄々感づいていたかも・・と思ったりしました。
昨年オークションに出品された彼の手書きの歌詞。
これはちょうど2005年のまさにこの裁判中に書かれたとされています。
タイトルの左に「Chorus」とあるので、マイケルは詩というよりもやはり歌詞として書いたのだと思われます。

The Innocent Man
If I sail to Acapulco or Cancoon(Cancun) Mexico
There the law is waiting for me
and God knows that I’m innocent
If they wont take me in Cairo
then lord where will I go?
I’ll die a man without a country
and only God knew I was innocent now.
もし僕が アカプルコかメキシコのカンクンへ船で渡ったとして
そこでも僕を待っているのは法律だ
神は僕の無実をご存知だけれど
もしも彼らがカイロに僕を連れていかなければ
その時、主よ 僕はどこに行けば?
僕は国のない男として死ぬだろう
神だけは初めから、そして今も僕が無実だと知っていらっしゃるけれど
少し意訳が過ぎているかもしれませんが、ジャメインの記述を読んだ後あらためてこの詞を読むと、やはりマイケルは気がついていたのではないかと思われてならないのです。
彼が別荘を持っていたとされるカンクンへ船で行くというのが、密かに目立たないようにというニュアンスを感じてしまいます・・とはいえ、マイケルはよもや自分のためにDC8プライベートジェットが待機していたなんて思いもよらなかったと思いますが・・
方法はどうであれ、仮に自分が南米に行ったところでアメリカの法律が自分を捕まえる(引渡し条約が締結されているという意味)と思ったのではないでしょうか。
そのような取り決めがない中東、という意味ならカイロという固有名詞が出てきてもおかしくないなと。(彼はバーレーンという具体的なことは知らなかったでしょうから)
誰かわからないけれど、ジャメインが算段をつけてくれたThey「彼ら」が中東に自分を連れて行けなければ、もうどこへ行っても無駄なのだ、どこへ行けば自分の無実が証明できるんだ?という思い・・
このまま万が一冤罪で有罪になってしまったなら、もう自分は死んだも同然だと・・
自分を生み育てた母国であるアメリカの司法によって、無実である自分に何らかの刑が処されるなら、この国はもう母国でも祖国でもないのだと・・
でも神様だけは、ずっと初めから、そして今この瞬間も自分の無実をわかって下さっていると・・
ジャメインの本の中にもママがマイケルに必死で「神様は本当のことをお分りくださっているわ、神様はご存知でいらっしゃるわ」と何度も言ったとありました。
でも裏を返せば神様しか自分の無実をわかっていない・・
世間や下手をすれば陪審員だって、自分が無実だという事をわかってくれずに、かつて自分が世話をした、あるいは助けた人間が手のひらを返して自分を貶める、そんな証言を信じてしまうのではないだろうか・・
そんなマイケルの胸が張り裂けそうな恐れと孤独と不安が、手に取るように伝わってきませんか・・?
もともと特徴のある文字を書く人だけれど、いつにもまして乱れているように見えます。
そう思って見るからでしょうね、本当に切ない・・
マイケルは公判中メゼロウ弁護士に「自分はあくまで法律に従う」と言っていたそうです。
彼の中では必ず真実が明らかになり、自分の潔白が証明される、という母国の司法を信じたい気持ちはもちろんあったでしょうけれども、一方では彼が散々味わってきた、そして今となっては黒人だから受けているのか白人のようだから受けているのかもわからない差別と偏見からくる終わりのないバッシング、不公平で悪意にまみれた報道・・それらの巨大で邪悪な力が働く現実に、本当に公正な審理がなされるのかという恐れに震えたこともあったのではないかと想像してしまいます。
そんな時に、まさに自分の心の叫びをあのような詞に形を変えて綴ったのかもしれないと思うだけで、胸が張り裂ける思いです・・
と同時に、そんな時でも彼はやはり真からのアーティストだったのだと。
メモに「コーラス」と書いてあるのは、この一連の詞を書いている時にも、彼の頭には大人数の合唱隊が歌うゴスペル曲のようなイメージが浮かび、いつか曲として完成させたいと思ったのかもしれません。
彼はそれまで数々の愛をはじめとするメッセージを歌に込めてきましたし、自分が直面した様々な困難でさえも彼にしか創り出すことの出来ない最上の芸術として昇華させてきたのですから・・
コーラスとしてこの詞が重要な部分を担ったかもしれない曲・・
この曲が完成し、自分が歌うその時は、まぎれもなくこの暗闇から抜け出して、まぶしい光を浴びているに違いないのですから・・
ああ、もちろんこれはわたしの勝手な想像の果ての妄想ですけれど。
でも仮にこのメモに書かれた言葉たちが、歌詞であったとするならば、彼のこの作品は形にならなかったけれども、いかに彼がLyricひとつとっても、いかに自身の魂を全身全霊で込めていたかが、今まで以上に理解できたような気がしました。
I always want to do music that inspires or influences another generation.
You want what you create to live, be it sculpture or painting or music.
Like Michelangelo, he said, “I know the creator will go, but his work survives.
That is why to escape death, I attempt to bind my soul to my work.’
And that’s how I feel.
I give my all to my work. I want it to just live.
僕はいつも、自分とは違う世代を動かしたり影響を与える音楽をやりたいと思っているんだ
自分が創造するものには、彫刻か絵画か音楽か、何にしても、長く生きていて欲しいと思うものさ
ミケランジェロのようにね、彼はこう言った
「私は、創作者はいなくなっても、その作品は永く生き続けることを知っている
それゆえ、私は死から逃げるために、自分の魂を作品に縛りつけようと試みる」とね
僕も、そんなふうに感じている
僕の魂のすべてを自分の作品に与えているよ、その作品が永く生き続けてほしいから
source:A continuation of the interview by EBONY
ジャメインのプランBは2005年6月13日のマイケルの無罪判決により決行されることなく、彼がこうして公にするまでは誰も知りえなかった話です。

これは裁判の後、正式にドバイを訪れた時のマイケル
家族の話を何もかも鵜呑みにはしないという話を冒頭でしましたが、確かに他の記述では「うーん・・」とすぐに賛同できない部分もありましたし、彼の記述をめぐってやはりなんだかんだと揉め事が起こりそうな予感もなきにしもあらずで、少し今後が心配な雲行き・・。
ただわたしのような一ファンが判断できませんし、またすべき事ではないと思っていますのでこちらには書きません。
読んだ方にもそれぞれの感想があって当たり前ですものね^^
ですが、少なくとも今回抜粋した部分に関しては、全面的に信頼できると思えました。
数多くのくだらない嘘や噂・・その中にはひょっとしたら本当のこともあるかもしれなくて、でも本当の意味で全くの完璧な人間などいないと思っていて、もちろんマイケルにもそれは言えると思うのですが、ただ「肌の誤解」と「彼が罪に問われること自体間違いであった」という、このふたつだけは絶対正しい真実を伝えていきたいと思う自分でしたから、あえてこれらに言及してくれたジャメインに感謝です。
ジャメインに感じていた複雑な思いも、固い結び目が解けるがごとく少し変化したように思います。
そして全面信頼のもうひとつの理由として、マイケルのそれまでちょっと謎だった「The Innocent Man」とジャメインのプランBが、わたしの中でパズルのピースが合うがごとく繋がったことが大きな決め手になりました。
マイケルが書いた言葉は、間違いなく彼の心を映したものだから・・
マイケルの周辺はとにかく複雑で、彼のことを語る人の何が本当で何が計算で何が嘘なのかなんて考えると大変です(苦笑)
だからこそわたしは最後は彼の残した言葉と音楽を道しるべにして
彼を大切に想っていきたいと思います
最後に、今回抜粋したジャメインの記事はこんな言葉で終わっています
I remember what Michael said at the start of these proceeding in 2003:
"Lies run sprints but the truth runs marathons. The truth will win this marathon "
The truest lyric he never sang.
私は2003年この訴訟の初めにマイケルが言った言葉を思い出します
「嘘は短距離走のような速さで瞬く間に広まるが、真実はマラソンのように時間がかかるものだ
このマラソンでは、真実こそが勝利する」
真実を綴った歌詞の歌を彼が歌う事はなかったけれど・・
【関連過去記事】
「本当に書きたかったことを(1)」序章
「本当に書きたかったことを(2)」白人願望説
「本当に書きたかったことを(3)」尋常性白斑
「本当に書きたかったことを(4)」ネバーランドの真実
「本当に書きたかったことを(5)」冤罪・1993年訴訟の悲劇
「本当に書きたかったことを(6)」冤罪・1993年訴訟の結末
「本当に書きたかったことを(7)」冤罪・2005年裁判
「本当に書きたかったことを(8)」冤罪・2005年裁判での無罪判決
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ママは床に崩れ落ちて泣くマイケルに「神様は本当のことをお分りくださっているわ、神様はご存知でいらっしゃるわ」と何度も繰り返したそうです。
マイケルの背中の痛みがひどいので抱きしめる事はできなかったけれど、ジャメイン、ジョセフ、ママの3人はマイケルを囲んで彼を慰めました。
弟にジャケットを着せながらジャメインは言います。
「強くいよう、マイケル。きっとすべてうまくいくから」
その後落ち着きを取り戻したマイケルは皆に謝ってこう言ったそうです。
I'm strong. I'm OK.
「僕は強いよ、大丈夫」
ジャメインは数日後にまた来る事を約束してひとり病院を出ます。
その後、仕事先のホテルで彼は、パジャマと黒いジャケット、ただ今度は白いTシャツを着て、傘を差し掛けるボディガードとジョセフに支えられながら、病院にいた時と同じようにふらふらと足を引きずるようにして歩く弟の姿をテレビで見た途端、電話の受話器をとりあげ、ある人物に電話をかけます。

ジャメインは万が一のことを考えて、ある信頼できる人物に、正義と言う欺瞞の名の下にありもしない罪による刑を下すかもしれない、この自由の国であるはずの母国の司法から、マイケルと彼の家族ごと追っ手の来ない中東(バーレーン)へ逃がす算段をとりつけていました。
プライベートジェットやパイロット、その他この作戦(「プランB」とジャメインは言ってます)に必要な手はずが全て整っていることを確認するためでした。
マイケルに対するあまりにひどい仕打ちによって、これ以上ないほど痛めつけられている弟の完全に憔悴した姿は、(実際はそんなことは不可能だったでしょうけれど)兄である彼に、本気でこのような計画を考えさせるに十分な動機となったのでした。
(この話はニュースにもなりました。ニュース記事はこちら)
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そのジャメインのプランBがいいか悪いかは別にして、わたしはそうまでしてでも、弟をこの苦痛極まりない過酷な状況から逃れさせたいと願う彼の兄としての強い愛情を感じました。
それはそもそもありもしない罪状で、裁判が始まっているという事だけでも信じがたいのに、このうえ受ける必要のない刑を下されるなんて事になったら・・
この裁判自体に不信を抱き司法を疑っていた兄の、弟のために何かやらずにいられなかった気持ちが痛いほど伝わってきました。
ジャメインはテレビのインタビューで意地の悪い質問に対し、そのように考えた理由を語っています。
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ジャメイン:自分の弟に意味も無く手錠がかけられているのを見たとき--9つの罪状で?なんだそれ?それと同時に、いや訴訟の前からだよ、児童相談所が彼を調べて、調査して、何も出てこなかったんだ。
彼もそれは分かっていた。色んな事が同時に行われていて、僕はそれを見ていて--
司会者:怖れていたのね。
ジャメイン:怖れる?
司会者:もしかしたら彼が罪を免れないかもって怖れていた…訴訟が失敗に終わらないかもと。
ジャメイン:公平な審判が受けられないかも、だ。彼が倒れて、病院に行ってから戻ったとき、裁判長が「もし45分以内に戻らなければ刑務所行きだ」と言ったのを聞いてからは。彼らの望みはそういうことなんだ。僕は思ったよ。「これで公平な審判が下るのか?」って。法がどういう風に転がるかは知っている。そして、僕は祈って、祈って、祈って。それからトム・メゼロウ氏と話した。彼は大丈夫だと言ったんだ。だから法を信じることにした。これは判決が下る前のことだよ。誰も知らなかったことだ。
以上、このインタビュー部分はこちらのMJブログさんから一部転載させていただきました。
インタビュー動画も見れるようになっていて、ありがたくも訳してくださっています。
この意地悪な司会者の背景やジャメインが真摯に答えている様子が良くわかると思いますので、ぜひごらんいただければと思います。
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もちろんマイケルにはこんな事知らせていなかった、とジャメインは書いています。
ですが
ひょっとしたらマイケルは、具体的なことは知らなくてもそういう動きを薄々感づいていたかも・・と思ったりしました。
昨年オークションに出品された彼の手書きの歌詞。
これはちょうど2005年のまさにこの裁判中に書かれたとされています。
タイトルの左に「Chorus」とあるので、マイケルは詩というよりもやはり歌詞として書いたのだと思われます。

The Innocent Man
If I sail to Acapulco or Cancoon(Cancun) Mexico
There the law is waiting for me
and God knows that I’m innocent
If they wont take me in Cairo
then lord where will I go?
I’ll die a man without a country
and only God knew I was innocent now.
もし僕が アカプルコかメキシコのカンクンへ船で渡ったとして
そこでも僕を待っているのは法律だ
神は僕の無実をご存知だけれど
もしも彼らがカイロに僕を連れていかなければ
その時、主よ 僕はどこに行けば?
僕は国のない男として死ぬだろう
神だけは初めから、そして今も僕が無実だと知っていらっしゃるけれど
少し意訳が過ぎているかもしれませんが、ジャメインの記述を読んだ後あらためてこの詞を読むと、やはりマイケルは気がついていたのではないかと思われてならないのです。
彼が別荘を持っていたとされるカンクンへ船で行くというのが、密かに目立たないようにというニュアンスを感じてしまいます・・とはいえ、マイケルはよもや自分のためにDC8プライベートジェットが待機していたなんて思いもよらなかったと思いますが・・
方法はどうであれ、仮に自分が南米に行ったところでアメリカの法律が自分を捕まえる(引渡し条約が締結されているという意味)と思ったのではないでしょうか。
そのような取り決めがない中東、という意味ならカイロという固有名詞が出てきてもおかしくないなと。(彼はバーレーンという具体的なことは知らなかったでしょうから)
誰かわからないけれど、ジャメインが算段をつけてくれたThey「彼ら」が中東に自分を連れて行けなければ、もうどこへ行っても無駄なのだ、どこへ行けば自分の無実が証明できるんだ?という思い・・
このまま万が一冤罪で有罪になってしまったなら、もう自分は死んだも同然だと・・
自分を生み育てた母国であるアメリカの司法によって、無実である自分に何らかの刑が処されるなら、この国はもう母国でも祖国でもないのだと・・
でも神様だけは、ずっと初めから、そして今この瞬間も自分の無実をわかって下さっていると・・
ジャメインの本の中にもママがマイケルに必死で「神様は本当のことをお分りくださっているわ、神様はご存知でいらっしゃるわ」と何度も言ったとありました。
でも裏を返せば神様しか自分の無実をわかっていない・・
世間や下手をすれば陪審員だって、自分が無実だという事をわかってくれずに、かつて自分が世話をした、あるいは助けた人間が手のひらを返して自分を貶める、そんな証言を信じてしまうのではないだろうか・・
そんなマイケルの胸が張り裂けそうな恐れと孤独と不安が、手に取るように伝わってきませんか・・?
もともと特徴のある文字を書く人だけれど、いつにもまして乱れているように見えます。
そう思って見るからでしょうね、本当に切ない・・
マイケルは公判中メゼロウ弁護士に「自分はあくまで法律に従う」と言っていたそうです。
彼の中では必ず真実が明らかになり、自分の潔白が証明される、という母国の司法を信じたい気持ちはもちろんあったでしょうけれども、一方では彼が散々味わってきた、そして今となっては黒人だから受けているのか白人のようだから受けているのかもわからない差別と偏見からくる終わりのないバッシング、不公平で悪意にまみれた報道・・それらの巨大で邪悪な力が働く現実に、本当に公正な審理がなされるのかという恐れに震えたこともあったのではないかと想像してしまいます。
そんな時に、まさに自分の心の叫びをあのような詞に形を変えて綴ったのかもしれないと思うだけで、胸が張り裂ける思いです・・
と同時に、そんな時でも彼はやはり真からのアーティストだったのだと。
メモに「コーラス」と書いてあるのは、この一連の詞を書いている時にも、彼の頭には大人数の合唱隊が歌うゴスペル曲のようなイメージが浮かび、いつか曲として完成させたいと思ったのかもしれません。
彼はそれまで数々の愛をはじめとするメッセージを歌に込めてきましたし、自分が直面した様々な困難でさえも彼にしか創り出すことの出来ない最上の芸術として昇華させてきたのですから・・
コーラスとしてこの詞が重要な部分を担ったかもしれない曲・・
この曲が完成し、自分が歌うその時は、まぎれもなくこの暗闇から抜け出して、まぶしい光を浴びているに違いないのですから・・
ああ、もちろんこれはわたしの勝手な想像の果ての妄想ですけれど。
でも仮にこのメモに書かれた言葉たちが、歌詞であったとするならば、彼のこの作品は形にならなかったけれども、いかに彼がLyricひとつとっても、いかに自身の魂を全身全霊で込めていたかが、今まで以上に理解できたような気がしました。
I always want to do music that inspires or influences another generation.
You want what you create to live, be it sculpture or painting or music.
Like Michelangelo, he said, “I know the creator will go, but his work survives.
That is why to escape death, I attempt to bind my soul to my work.’
And that’s how I feel.
I give my all to my work. I want it to just live.
僕はいつも、自分とは違う世代を動かしたり影響を与える音楽をやりたいと思っているんだ
自分が創造するものには、彫刻か絵画か音楽か、何にしても、長く生きていて欲しいと思うものさ
ミケランジェロのようにね、彼はこう言った
「私は、創作者はいなくなっても、その作品は永く生き続けることを知っている
それゆえ、私は死から逃げるために、自分の魂を作品に縛りつけようと試みる」とね
僕も、そんなふうに感じている
僕の魂のすべてを自分の作品に与えているよ、その作品が永く生き続けてほしいから
source:A continuation of the interview by EBONY
ジャメインのプランBは2005年6月13日のマイケルの無罪判決により決行されることなく、彼がこうして公にするまでは誰も知りえなかった話です。

これは裁判の後、正式にドバイを訪れた時のマイケル
家族の話を何もかも鵜呑みにはしないという話を冒頭でしましたが、確かに他の記述では「うーん・・」とすぐに賛同できない部分もありましたし、彼の記述をめぐってやはりなんだかんだと揉め事が起こりそうな予感もなきにしもあらずで、少し今後が心配な雲行き・・。
ただわたしのような一ファンが判断できませんし、またすべき事ではないと思っていますのでこちらには書きません。
読んだ方にもそれぞれの感想があって当たり前ですものね^^
ですが、少なくとも今回抜粋した部分に関しては、全面的に信頼できると思えました。
数多くのくだらない嘘や噂・・その中にはひょっとしたら本当のこともあるかもしれなくて、でも本当の意味で全くの完璧な人間などいないと思っていて、もちろんマイケルにもそれは言えると思うのですが、ただ「肌の誤解」と「彼が罪に問われること自体間違いであった」という、このふたつだけは絶対正しい真実を伝えていきたいと思う自分でしたから、あえてこれらに言及してくれたジャメインに感謝です。
ジャメインに感じていた複雑な思いも、固い結び目が解けるがごとく少し変化したように思います。
そして全面信頼のもうひとつの理由として、マイケルのそれまでちょっと謎だった「The Innocent Man」とジャメインのプランBが、わたしの中でパズルのピースが合うがごとく繋がったことが大きな決め手になりました。
マイケルが書いた言葉は、間違いなく彼の心を映したものだから・・
マイケルの周辺はとにかく複雑で、彼のことを語る人の何が本当で何が計算で何が嘘なのかなんて考えると大変です(苦笑)
だからこそわたしは最後は彼の残した言葉と音楽を道しるべにして
彼を大切に想っていきたいと思います
最後に、今回抜粋したジャメインの記事はこんな言葉で終わっています
I remember what Michael said at the start of these proceeding in 2003:
"Lies run sprints but the truth runs marathons. The truth will win this marathon "
The truest lyric he never sang.
私は2003年この訴訟の初めにマイケルが言った言葉を思い出します
「嘘は短距離走のような速さで瞬く間に広まるが、真実はマラソンのように時間がかかるものだ
このマラソンでは、真実こそが勝利する」
真実を綴った歌詞の歌を彼が歌う事はなかったけれど・・
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